CF104 『幸せなひとりぼっち』
En man som heter Ove
どこの国にも不機嫌な老人がいる
オーヴェ(ロルフ・ラスゴード)は、最愛の妻・ソーニャ(イーダ・エングヴォル)に先だたれ、ひとり暮らしだ。
かつては自治会長をするなど、近隣との交流もあったし、友だちもいた。
だが、それは社交的で明るい妻がいたからだ。
あまけに、合理化を図る若い経営者から、昔堅気の職人気質をうとまれて、仕事も失ってしまった。
以来、妻の墓石に語りかけるほかは、住宅地を見回り、放置自転車を撤去したり、近隣に当たり散らす毎日。
どこの国にでもいそうな、寂しいのに気難しいタイプだ。
彼は妻のそばにいきたいと願い、自殺を図る(几帳面な自殺手順の数々に、苦笑させられる)。
ところが、引っ越してきた騒々しい一家に、ことごとく妨害される。
一家の主婦・パルヴァネ(バハー・パール)はイランからの難民で、三人目の子どもを妊娠中。
気のいいスウェーデン人の夫はあまり頼りにならないので、彼女は当然のように、お向かいのオーヴェにさまざまな助けを求める。
最初は邪険にしていたオーヴェだが、異郷の地で懸命に生きるパルヴァネと、美味しいペルシャ料理に、少しずつ心を開いていく。
パルヴァネと交流するなかで、オーヴェは自分の人生を振り返る。
若くして両親を失い、貧しかったが、奇跡のように美しいソーニャと出会ったこと。
不幸な事故に遭遇したが、車イスになっても、常に前向きに生きる妻がいたから、とても幸せだったこと…。
自治会での旧友が施設送りになるのを阻止し、ゲイの若者にアドバイスするなど、北欧ならではのエピソードも楽しめる作品。
(ハンネス・ホルム監督/2015年/スウェーデン/116分)
