CF109 『未来よ こんにちは』

CF109 『未来よ こんにちは』
L’avenir
思いがけずひとり暮らしになってしまったら
ナタリー(イザベル・ユペール)は、パリの高校で哲学を教えている。
通勤電車のなかで哲学書を読みふけり、スト中の学生をかきわけて教室に直行し、ジャン=ジャック・ルソーを「革命の生みの親」と解説する。
フランスの高校には職員室がないらしいが、校門の外でのストにも不干渉らしい。
それよりも、高校の哲学の授業という出だしに、驚いた。
フランスでは大学入学資格試験に、哲学の4時間に及ぶ筆記試験があり、高校では必修科目なのだという。
議論好きの国民が育つわけだ。
「自分で考える力を育てる」ことを使命とするナタリーは、ちょっとなまいきな発言を繰り出す生徒たちと冷静に対話する。
彼女は哲学の教科書も執筆し、評価は高い。
だが、再版の打ち合わせで、編集者から「堅苦しくて、売れない」と言われ、くやしさを呑み込む。
彼女には娘と息子がいるが、ふたりとも独立した。
だが、ひとり暮らしの母・イヴェット(エディット・スコブ)は、不安にかられてひんぱんに救急車を呼び、授業中もおかまいなしに電話をかけてくる。
仕事と通い介護をこなす日々のなか、自慢の教え子で、哲学教師になったファビアン(ロマン・コリンカ)が訪ねて来た。
喜ぶナタリーだが、彼は仕事を辞め、仲間たちとアルプス山麓で共同生活を始めていた。
少し落胆する彼女に、今度は夫のハインツ(アンドレ・マルコン)が、25年間の夫婦生活をご破算にして、若いスペイン女性と暮らすと言い出した。
人生の歯車がきしむなか、平常心を保ちながら離婚手続きを処理するナタリーだったが、苦労して老人ホームに入居させた母も亡くなってしまった。
母が遺した黒猫のパンドラを、自宅に連れて帰ったものの、ナタリーは猫アレルギーの持ち主だ…。
人生の後半戦に予期せずひとりになってしまったナタリーが、葛藤を乗り越え、孤独だが自由な境遇に新たな希望を見出す姿に潔さがある。
浮気している父親に決断を迫る娘の姿や、未練がましい夫をきっぱり追い出す妻の態度に、フランス的な生き方を感じる作品。
(ミア・ハンセン=ラブ監督/2016年/フランス・ドイツ/102分)

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