CF112 『サーミの血』

CF112 『サーミの血』
Sameblod
先住民族への差別と闘った少女の人生
老いたエレ・マリャ(ハンナ・アルストロム)は、息子と孫にうながされて、しぶしぶ妹・ニェンナの葬儀に出かけた。
彼女は、スウェーデン北部の先住民族であるサーミ族の出身。
若くしてコミュニティを飛び出したため、初めての帰郷になった。
久しぶりに会う親族とろくに会話も交わさないエレ・マリャは、ひとりホテルにこもり、若かった日々を思い出す。
彼女が少女(レーネ=セシリア・スパルロク)だった頃、トナカイの放牧を営むサーミ族は差別的な扱いを受けていた。
子どもたちは寄宿学校で学んだが、分離政策でサーミ語は禁じられ、人類学の調査対象としてモルモット扱いされていた。
聡明なエレ・マリャは、教師になりたいと進学を望んだ。
だが、当時、スウェーデンではサーミ族は優生学的に劣ると考えられていた。
担任から、通常の教育課程ではないので、進学は無理だと言われた彼女は、「見世物になっているのはイヤだ」と自力で脱出に挑んだのだった…。
ラップランドは、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、ロシアにまたがる地域で、長くサーミ族への支配と差別の複雑な歴史が続いてきたという。
冬は猛烈に寒そうだが、北極圏の美しい風景のなかで、サーミ族の放牧文化が魅力的に描かれるとともに、エレ・マリャを取り巻く差別の構造が、注意深く表現されていく。
日本でもアイヌ民族に対する差別政策は長く続き、「北海道旧土人保護法」が廃止されたのは1997年のことだ。
2018年1月には、障害を理由に強制不妊手術を受けさせられた宮城県の女性が国を訴えたが、「旧優生保護法」が母体保護法に改正されたのも1996年で、20年しか経っていない。
みずからの出自を否定したエレ・マリャの勇敢でほろ苦い人生を観ながら、民族差別も障害者差別もともに「優生学」に拠るところがあり、学問の罪を問うことも大切なのだと教えられた。
(アマンダ・シェーネル監督/2016年/スウェーデン、ノルウェー、デンマーク/108分)

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