CF125 『家(うち)へ帰ろう』
El ultimo traje
70年越しの友情を確かめる旅
ブエノスアイレスに住む仕立屋のアブラハム(ミゲル・アンヘラ・ソラ)は、88歳になった。
娘や孫たちがお祝いに来てにぎやかだが、大いに機嫌が悪い。
それもそのはず、若い時に痛めた足が悪化して、翌日には老人ホームに入居する予定。
自宅はすでに売却され、余ったお金は娘たちが分けてしまっていた。
最後に仕立てたスーツをみつめた彼は、その夜、家出を決行。
スーツは親友のために作ったのだ。
人生の最後に、彼に届けよう。
親友が住むのは、なんとポーランド。
深夜の航空便でマドリッドに向かい、入国審査官に「70年前の友人は生きているのか?」と聞かれる。
トランジットで泊まった安ホテルでは、全財産を盗まれる。
しかし、なんとしてもポーランドに行かねばならない。
マドリッドに住む絶縁状態だった末娘に頭を下げて、お金をもらい、高速列車TGVでパリへ。
だが、乗り継ぎ表示を見て、アブラハムは愕然とする。
パリからワルシャワへ行く列車は、ドイツを通るのだ。
ポーランドの地方都市で、ユダヤ人コミュニティに育った彼には、ナチス・ドイツの絶滅収容所からの生還者だ。
「ポーランド」ですら口にせずメモを示しているのに、「ドイツ」なんてとんでもない!
駅の案内で「ドイツを通らずポーランドへ行きたい」と相談したが、係員にも周囲の旅人にも笑われてしまう。
救いに入ったのが、ドイツ人のイングリッド(ユリア・ベアホルト)。
ヘブライ語も話す文化人類学者の彼女は、アブラハムがドイツの地を踏むことなく、ポーランドに行くのを手助けする…。
日本では8月15日が「終戦の日」だが、ヨーロッパでは、連合国がドイツを降伏させた5月8日が「ヨーロッパ戦勝記念日」だ。
赤道と大西洋をまたぐ70年越しの友情とともに、20世紀の戦争が引き起こした「被害」と「加害」、そして「和解」を考えさせられる作品。
(パブロ・ソラルス監督/2017年/スペイン・アルゼンチン/93分)
