CF129 『ぼけますから、よろしくお願いします。』

CF129 『ぼけますから、よろしくお願いします。』
認知症と生きる夫婦の記録
広島県呉市で育った信友直子監督は、大学進学以来、東京で暮らしている。
両親との思い出を作ろうと、帰郷しては「家族の記録」を撮りはじめたが、ファインダー越しの母・文子さんの様子がおかしくなった。
文子さんは料理から、裁縫や編み物までこなす「スーパー主婦」だったが、2014年、87歳でアルツハイマー型認知症の診断を受けた。
でも、他人に頼るのはイヤだと介護保険のサービスを拒む。
耳の遠い父・良則さんは、リンゴの皮すらむいたことがない夫だったが、95歳にして家事にチャレンジする。
いきなりはじまった「超・老老介護」の日々。
1200日間に及ぶ記録は、「私はバカになった」とふさぎ、「どうしたらいいんかね」と泣く文子さんの姿もとらえる。
胸がつまるシーンも率直にさらけ出す潔さが、作品に明るくエネルギッシュな印象を与える。
仕事を辞めて実家に戻ろうかと迷う娘(監督)に、良則さんは「あんたはあんたの仕事をせい」と言う。
90代半ばにして洗濯や買い物に奮闘する姿は体力的につらいだろうが、ユーモラスにも映る。
不安を抱え、荒れる文子さんの言動にも、ゆったりと構える姿はチャーミングだ。
監督は、母が認知症になったことで、夫婦の距離が縮まったと気づき、「認知症もあながち悪いことばかりではない」と思ったそうだ。 
パンフレットには、監督が「親の反対を押し切って、2年後にやっと地域包括支援センターに相談に行った」という談話があった。
2018年の時点で、文子さんは要介護1、ホームヘルプ・サービスとデイサービスを利用しているという。
2016年の正月、文子さんは娘に「ぼけますから、よろしくお願いします」と挨拶した。
その言葉が作品タイトルになった。
介護保険は文子さんの期待に「おまかせください」と応えることができるだろうか。
(信友直子監督/2018年/日本/102分)

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