CF134 『99歳 母と暮らせば』

CF134 『99歳 母と暮らせば』
天真爛漫な認知症介護の日々
映像のプロが手がける認知症介護のドキュメンタリー作品が増えているが、ユーモアに満ちた本作は笑いながら観てしまった。
なんといっても、撮影時に白寿(99歳)を迎えたという監督の母・千江子さんが明るく、おしゃべりで、食いしん坊だ。
ハーモニカが得意で、寝転がったままでも演奏できる。
朝食ができたと71歳の息子(監督)が呼べば、ベッドまで持ってきてと甘える。
応じる息子の攻防戦は、あくまでも穏やかで、根気がある。
ついでに言えば、いい声だ。
千江子さんは、同一敷地内に長男夫婦がいるものの、一軒家でひとり暮らしを続けてきた。
しかし、家の中で転ぶなど危うい場面が増えてきて、次男の監督は、「90代まで生きて、穏やかに幸せなかたちで過ごせれば」と同居を決断。
母との暮らしにカメラを回したのは、最初は記録のためだったという。
千江子さんがまったく撮影を意識していないのがすごいが、1年間の記録は、近隣の草花が四季を教え、町内会の集まりや家庭菜園の収穫など変化に富む。
スポーツ少女だった千江子さんは、22歳で結婚のため、香川県から東京・浅草にやってきた(義父、つまり監督の祖父は浅草喜劇の曾我廼家五一郎という)。
洋裁が得意で、しっかり者の主婦として生きてきた母のライフストーリーには、監督の愛情を感じる。
料理好きの息子と並んで、晩酌をする姿もほほえましい。
とはいえ、認知症の症状はある。物忘れや真夜中の食事、物取られ妄想、トイレの失敗もあるが、幻視を起こす様子にはどきりとした。
介護保険をどのように利用しているか、料金の説明もきちんと入り、わかりやすい。
ケアマネジャーの訪問やサービス担当者会議の模様もしっかり織り込まれ、認知症介護の入門編として観るのもいいと思う。
(谷光章監督/2018年/日本/92分)

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