CF155 『ルルドの泉で』

CF155 『ルルドの泉で』
Lourdes
神に選ばれるのは誰か?
フランスのピレネー山中にあるルルドは1858年、ベルナデットという少女が聖母マリアに出会い、近くに湧き出た泉の水に病気を治す力があると評判になった。
ベルナデットはカトリックの聖人に列せられたが、その経緯については、アメリカ映画『ベルナデットの歌』(ヘンリー・キング監督、1943年)が詳しい。
バチカンが公式に奇跡を認め、泉の水に一定の治癒力があると評価が定まり、ホスピスや病院、奉仕団が整備され、ルルドは21世紀になっても、世界中から年間600万人もの巡礼者が訪れる一大聖地、そして観光地だ。
巡礼ツアーに参加したクリスティーヌ(シルビー・テステュー)は多発性硬化症で、首から下は動かすことができない。
ツアー・メニューは、聖母マリアが出現した洞窟の見学、泉の水による洗礼、告解など。
車いすの彼女はボランティアやツアー参加者の介助を得て、スケジュールをこなしていく。
大聖堂がそびえ、ホテルや土産物屋がひしめくルルドの風景に、驚いてしまった。
クリスティーヌは告解の場で、「ふつうの暮らしがしたい」と不自由な身体への怒りをあらわにする。
だが、神父は「あなたにとって『ふつう』とは何か?」とシビアに問い返す。
彼女を介助するボランティアたちは、本人や家族が病を抱え、奇跡に淡い期待を抱く人たちだ。
クリスティーヌ本人には信仰心が薄い。
それなのに、奇跡は彼女に訪れた。
少しずつ身体が動くようになり、歩けるまでになったのだ。
人びとは彼女を祝福するが、それぞれの胸には「なぜ、彼女が選ばれたのか」、「なぜ、私ではないのか」という羨望と嫉妬が渦巻く。
クリスティーヌは思いもよらない幸運を喜ぶが、ツアー最終日のお別れパーティーで、再び体調が悪くなっているのを自覚する…。
病気や障害がある人の治りたいという思いの強さを再認識するとともに、癒しの場として機能するルルド、そして、奇跡とは宝くじのようなものだというクールな視点が興味深い作品。
(ジェシカ・ハウスナー監督/2009年/オーストリア・フランス・ドイツ/99分)

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