CF156 『ふたつの部屋、ふたりの暮らし』
Deux
「秘めたる愛」のゆくえ
舞台はフランス南部、地中海に程近いモンペリエ。
アパートの最上階に暮らすニナ(バルバラ・スコヴァ)とマドレーヌ(マルティーヌ・シュヴァリエ)は、エレベーターホールをはさんで、それぞれの部屋を構えている。
とはいえ、来客がない限り、玄関ドアは開けっ放し。
ニナはマドレーヌの部屋でほとんどの時間を過ごしている。
70代とおぼしきふたりは長く恋仲で、部屋を売り、ローマで余生を過ごす計画をたてている。
不動産屋に売却額の見積もりを頼み、あとはマドレーヌがふたりの子どもに説明すればすむ。
しかし、彼女はなかなか実行できない。
娘はDV夫が死ぬまで耐えた母と思っているし、息子は母の浮気(相手が女性とは知らない)をまだ、許してくれない。かわいい孫もいる。
ドイツ人でシングル、しがらみが一切ないニナは、「老いたレズビアンのカップルだと、どうして言えないの!」とマドレーヌに迫る。
だが、憔悴するマドレーヌは脳卒中で倒れてしまった。
発見したニナは救急車を呼んだが、同乗はさせてもらえない。
退院しても、娘が住み込みの介護人を手配してしまったので、なかなか近づけない。
ニナは一計をめぐらせて、介護人を追い出し、善き隣人として、愛する人に寄り添う。
マドレーヌは少しずつ回復するが、言葉は戻らない。
そして、娘に一緒にベッドにいるのをみつかってしまい、マドレーヌは施設に送られてしまった…。
「老いらくの恋」という古典的な言葉があるけれど、高齢期の新たな暮らしは、異性愛であっても、子どもなど親族の了解を得るのは難しい。
同性愛ではさらにハードルがあがるが、あきらめることなく、正面突破に挑むニナの姿がりりしい。
介護人や施設の医師が、ニナを求めるマドレーヌの行動が理解できず、「不穏だから」と薬を飲ませてしまい、回復が遅れるエピソードも印象的だ。
ベテラン女優ふたりの存在感あふれる演技は、愛らしく、時になまめかしい。
(フィリッポ・メネゲッティ監督/2019年/フランス、ルクセンブルク、ベルギー/95分)
