CF164 『83歳のやさしいスパイ』
El agente topo
疑惑の老人ホームに潜入してみれば…
いい映画だなあと思ったのだが、作品情報を調べて、ドキュメンタリーと知って驚いた。
だって、南米・チリの老人ホームで、母親が虐待を受けているのではないかと疑った娘が、探偵事務所に調査を依頼する、というのがスタートだ。
探偵事務所はホームに怪しまれないよう、潜入調査員として80~90歳の男性という条件で求人広告を出した。
妻を亡くしたばかりの主人公・セルヒオは、生きがいを探していた。
他の応募者も含めて、みんな仕事は欲しいが、スマートフォンの操作という条件がクリアできない。
セルヒオの使い方もかなり怪しいものだが、めでたく採用されて、探偵事務所で眼鏡型隠しカメラと暗号の特訓を受け、無事にホームに入居する。
こじんまりした施設だが、依頼人の母親がだれなのか特定できず、セルヒオはすみずみまで歩きまわる。
おばあちゃんが多いのは、どこの国も同じようだが、物腰のやわらかい紳士で、みんなの話し相手をするセルヒオは、あっという間にアイドルになってしまった。
セルヒオに一目ぼれして、デートの申し込みをしようかと悩むベルタ。
記憶障害があるルビラは、面会に来ない家族を待ち続けている。
認知症のマルタは、正面玄関で「ここから出して」と通行人に呼びかけるのが日課。
即興詩を作るのが得意なペティタ…。
みんなが寝静まってから、暗い食堂でこっそり探偵事務所に報告を送るセルヒオの姿がユーモラスで、ばれやしないかとはらはらもさせられる。
とはいえ、施設のスタッフはてきぱきと仕事をこなし、入居者への対応も明るく、やさしく、いったいどこに虐待があるのか、謎は深まる。
数か月の「潜入調査」を経て、セルヒオが綴った報告書には、思いがけない指摘があった…。
日本では、高齢者に介護助手などで働くことが期待されているが、おばあちゃんたちとセルヒオの交流をみていると、施設であってもコミュニティづくりが必要なのだとおもわされた。
(マイテ・アルベルディ監督/2019年/チリ、アメリカ、ドイツ、オランダ、スペイン/89分)
